手術を受けてストーマを造ることが決まった場合、体にどんな変化が起こるのか、生活はどう変わるのか、いろいろ心配になることは多いのではないでしょうか。変化を受け入れるには時間も必要ですし、突然の出来事に対する驚きや衝撃、現実を受け入れたくない気持ちもあるかもしれません。
それでも、ストーマはこれからの生活に欠かせないものとなります。まずは、ストーマについてご説明させて頂き、それからストーマ装具を使う生活について知って頂ければと思います。
尿路ストーマ
尿路ストーマは、膀胱の機能が損なわれた場合や膀胱から尿道を経て排尿する尿路が障害された場合に、尿路を変更する「尿路変向術」により造設されます。造設方法には、尿管を使う「尿管皮膚瘻」と尿管と腸管を使う「回腸導管」の2種類があります。
尿道には尿道括約筋という筋肉があり、尿を出したり我慢したりというコントロールをしますが、ストーマにはそういった筋肉がないため、腎臓で尿が造られるとストーマから排出されます。ストーマから排出される尿をためておくための装具をストーマ装具といいます。
ストーマ装具に尿がたまったらトイレに捨て、定期的に装具を新しいものに交換します。日常生活にはほとんど制限がなく、スポーツや旅行、温泉を楽しむこともできます。ストーマ装具を取り外すための剥離剤や、固定ベルトなどストーマケアのための製品も数多くあります。
困った時は病院に相談
ストーマ装具はお腹に貼って使いますので、かぶれたり、かゆくなったりという皮膚のトラブルや、ストーマ装具がはずれやすくなってしまったり、便がもれるといった装具のトラブルが発生することがあります。何か困ったことがあったら、病院やストーマ外来にすぐ相談することも、ストーマと上手に付き合うために大切なことです。
「ストーマ外来」は、ストーマを造設された方のための専門的なケアや、生活全般についての相談が行なえるストーマ専門の外来です。ストーマに関する専門知識をもった皮膚・排泄ケア認定看護師が対応してくれます。利用方法は病院によって異なるので、受診を希望する場合は、事前に問い合わせて確認しましょう。
ストーマ装具について
ストーマ装具は、ストーマ袋(パウチ)と、ストーマ袋をお腹に固定する面板(フランジ)からなります。尿路感染を考慮し、たまった尿がストーマに逆戻りしないよう、ストーマ袋には逆流防止弁がついています。
ストーマ装具は、ストーマ袋と面板が一体になっている単品系(ワンピース)と、別々になっている二品系(ツーピース)の2つの種類があります。単品系は、ストーマ袋と面板が一体になっているため、着脱の手間が少なく、薄くて目立ちにくいというメリットがあります。二品系は、ストーマ袋と面板が別になっているため、ストーマ袋だけを交換でき、面板を貼った状態で袋の向きを調整できるメリットがあります。
面板は、平面型や凸面型、材質の硬いものや柔らかいもの、面板に既成孔が空いているものや自分で孔をカットして使うものなどいろいろな種類があります。平面型のほうが柔らかく、体の動きにも追従しますが、ストーマに高さがない場合などは、凸面型の面板を使うことで密着を強化することができます。ストーマの状態や体形などを考慮し、適切なストーマ装具を選択することが重要となります。
トイレにいく間隔は?
溜まった尿は、パウチの1/3~1/2になるくらいの量(だいたい2~4時間の間隔)でトイレで排出することをお勧めします。飲水量が多ければ、排出する間隔はもう少し短くなります。
腎臓は、血液から老廃物や毒素をろ過し、余分な水分なども一緒に取り除いて尿をつくります。人の1日の尿量は、水分の摂取量や発汗、運動などにもよりますが、1500ml~2000mlくらいとなります。
すぐにトイレに行けない時は
長時間トイレに行けないときは、足に装着にて尿をためるレッグバッグを使用すると、排出の間隔を伸ばすことができます。レッグバッグは、ストーマ袋の排出口とレックバッグをチューブで接続して使いますので、適合する製品をお選びください。
就寝時用のバッグ
就寝時は、容量の大きな採尿バッグ(1000ml~2000ml)を使うことで、朝まで安心して眠ることができます。採尿バッグは、2週間程度は繰り返して使うことができます。採尿バッグを洗浄する場合は、酢水(酢1:水3)を接続チューブから流すとよいでしょう。
何日ごとに交換する?
使用しているストーマ装具の種類や個人によって違いがありますが、1日~5日に一度は、ストーマ装具を腹部から外し、新しいものに交換します。一般的には、週2回(3~4日)の間隔で、シャワーや入浴の際に交換します。ストーマ袋は防水加工がされていますので、装具を交換しない日は、装具をつけてそのまま湯船に入ることもできます。
交換時期の目安
ストーマ装具の交換が早すぎたり、遅すぎたりしてないかを判断するには、面板がどのくらい溶けているかをチェックすると良いでしょう。ストーマ装具の面板は、水分を吸収してふやけて白っぽくなったり、溶けていきます。ストーマ装具を交換したときに、面板の孔(あな)の周りをチェックして、5mm程ふやけていたり、溶けている状態であれば、ちょうどいいペースと言えます。
面板の孔(あな)の周りが5mmより多くふやけていたり、溶けていた場合は、交換が少し遅かった可能性があります。次の交換時期を1日早めるなどして、ちょうどよい交換の間隔を調整しましょう。面板の皮膚保護剤は、水分を吸収することで皮膚を守っていますが、溶けてしまうと皮膚の負担も増していきます。適切な装着期間で新しい装具に交換することは、皮膚トラブルを予防するためにも大切です。
気温が高い時期や運動をした場合は、汗の水分によって面板が早く溶けます。また下痢をした場合などは、便に含まれる水分によって面板の溶けが早くなる場合もあります。季節や体調、活動量によっても交換の間隔を調整しましょう。
交換に適した時間帯
装具交換をする時間帯は、起床直後や食事前など、排尿の少ない時間帯を選ぶと落ち着いて行えます。装具を交換している間もストーマから尿がでることがあります。筒状に巻いたロールガーゼをストーマに当てて、尿を吸い取りながら行うと、皮膚を濡らさずに装具交換が行えて便利です。ガーゼを巻いて自作することもできます。
入浴直後は注意
入浴直後は、面板の温度が上がっているため粘着が強くなり、剥がしにくいことがあります。入浴後にストーマ装具を交換するときは、30分以上間を置き、面板の温度が下がったのを確認してから行うようにしましょう。
ストーマ装具の交換
装着していたストーマ装具は、交換前に、中身を完全に空にしておきます。フリーカットのストーマ装具を使用されている方は、面板の孔をカットしておきましょう。面板をはがしやすくする剥離剤や皮膚を洗浄する洗浄料、拭き取り用のガーゼなど、ストーマをケアする用品を準備してからストーマ交換を行うとスムーズに行えます。使用済のストーマ装具を捨てるゴミ袋なども準備しておくと便利です。
交換手順
もっと詳しく
面板の孔の大きさについて
ストーマ装具の面板の孔のサイズは、大きすぎるとストーマの周りの皮膚に尿がついて、肌荒れの原因にもなります。反対に、面板の孔がストーマと同じ大きさだと、面板の縁とストーマの粘膜が接触して傷つくことがあります。面板の孔のサイズは、ストーマよりも2mm程度大きめを目安としてください。
かゆみやかぶれがあったら
ストーマ装具を貼っている皮膚に、かゆみやひりひりした感じがある場合は、便が皮膚に接触して、皮膚を刺激しているのかもしれません。お腹の皮膚にしわやくぼみがあると、面板の下に隙間ができ、そこに便が入り込んでしまうことがあります。ストーマの周囲の皮膚が赤くなったり、肌が荒れて痛みを感じたりしたら、病院やストーマ外来などの医療機関に早めに相談しましょう。
ストーマの保護
「まもーるベルト」「ストーマソフトカバー」は、プラスチックのカバーでストーマを覆い、満員電車や車のシートベルトの圧迫、スポーツ時の衝撃からストーマを守ります。「U型フォーム」は、厚みのあるU型のウレタンフォームでストーマの周りに空間を作り、腹帯や着物の帯などの圧迫からストーマを保護します。
ストーマ装具の固定
ストーマ袋の重さが気になる場合は、トイレで排出する回数を増やしたり、ベルトで体との密着度を高めたり、腹帯や下着の中に収納する方法があります。腹帯は、下端を折り返してポケット状にすることで、パウチを固定することができます。「オストミーシークレット」は、内側のポケットにストーマ装具を収納できるオストメイト用の下着です。
においのケア
ストーマ装具は防臭性がある構造ですので、密閉されている限りにおいはありません。
ストーマ装具の排出口に尿がついたり、パウチにも尿が付着したままになっていると、においの原因になります。トイレに流せるおしり拭きや除菌効果のあるスプレーで、排出口をきれいに拭き取ることをおすすめします。
尿のにおいは、においを強くする食べ物を控えることでも軽減できます。まったくとらないと栄養が不足する食品もありますので、1食で下記の食品を複数摂らないようにしたり、出かけるときや人前にでる時には摂取を控えるといった工夫をしましょう。
消臭剤
消臭剤は、ストーマ袋(パウチ)の中に入れることで、においを軽減します。ストーマ装具を装着する前に、ストーマ袋(パウチ)の中に消臭剤を入れ袋全体になじませます。装着後は、トイレに流して袋を空にした後、排出口から消臭剤を入れて補充します。
消臭効果のある製品
レッグバッグを足に固定するためのレッグバッグカバーや夜用の採尿バッグのカバーなど、消臭素材を使用した製品もあります。