乳がん手術後のボディケア

がん治療

乳がんの治療法には、手術、放射線治療、薬物療法がありますが、手術によってがんを取りきることが基本となります。手術当日は安静が必要ですが、翌日からはトイレも自分で歩いていけるようになり、食事も普通にとれることがほとんどです。入院期間は4日~10日間程度ですが、手術の方法や病院によって異なります。

手術を受けたあとは、ガーゼなどで保護していても、下着の生地の硬さや締めつけが気になったり、摩擦による痛みを感じることがありますので、胸全体を柔らかくホールドし、縫い目やタグが肌に当たらない術後用下着を選ぶと安心です。

手術後は、痛みなどから手術した側の腕が上がりにくく、動かしづらいと思いますが、そのままにしておくと日常生活にも不便が生じてしまいます。関節や筋肉がこわばって動かしにくくならないよう、病院の指導にしたがい、腕や肩を動かすリハビリテーションを行いましょう。

術直後から使える下着

術後用の下着は、刺激に敏感になっている肌のために、縫い目やタグとの摩擦を減らし、やわらかくフィットするよう考慮されています。前開きのものは着脱しやすいので、腕が動かしにくい時期にも便利です。


「前開きハーフトップ」や「ソフトケアブラ」は、胸を締め付けない形で着脱しやすい前開き式です。「ザ・ブレストラップ サラシ」は、ベルトが3つのパートに分かれているため、圧迫の方向が調整でき、乳房形状に応じたサポートができる圧迫保定下着です。

前開きハーフトップ
ソフトケアブラ
ザ・ブレストラップ サラシ

手術痕について

手術直後の傷は、見るのがつらいと感じられる時があるかもしれませんが、日がたつにつれ、腫れもひいて目立たなくなっていきます。手術の痕を目立たなくする方法として、抜糸直後の手術痕にテーピングをして手術痕を押さえ、傷跡のふくらみや幅が広がらないようにする処置があります。

テーピングのテープは、肌の色に近いベージュのものがありますので、手術痕をカモフラージュすることもできます。シリコンジェルシートは、ケロイドや肥厚性瘢痕の予防に効果があると言われており、傷跡の保護としてもお使いいただけます。使用に際しては、医療従事者の方に相談の上で使うようにしましょう。

術後の痕が落ち着いたら

手術の創部が落ち着いた1~2ヶ月後頃からは、手術前と同じ下着を使用することができます。乳がん術後用のシリコンパッドや乳がん術後用のブラジャーをご検討されている方には、サイズやフィット感の確認のためにも、専門店で試着してからのご購入をおすすめします。左右の重さのバランスや、洋服を来た時のシルエットなどを相談しながら選んでいきましょう。

シリコンパッド

乳がん術後用のシリコンパッドは、直接肌に装着するタイプや、ブラジャーのポケットに入れて使うタイプなどがあります。シリコンを使用した自然で柔らかな質感で、ボディラインに合わせてサイズや形状を選ぶことができます。
・乳がん術後用シリコンパッド・下着 アモエナ

ブラジャー

パッドを入れて使うことができるブラジャーは、着脱しやすい前開きのものや、ワイヤー不使用で肌当たりの柔らかいものなど、デザインも種類も豊富です。「ツーピースブラ」は左右に分離でき、手術側だけ着用することもできます。
・乳房を手術された方の下着 ワコールリマンマ アボワール

ツーピースブラ レーシー
ツーピースブラ ナチュラル
パッドが入る下着

ブラジャーの締め付けが苦手だったり、既にお持ちのブラジャーと組み合わせてお使いになりたい方には、インナーと一体になったブラジャーやパッド単体の商品もございます。複数のパッドを組み合わせて使うこともできます。

シャツタイプブラ
マロン型パッド
ジェルパッド
温泉用入浴着

全国の温泉・入浴施設では、手術の跡を気にせず温泉を楽しめるよう、入浴着の着用を認める動きが広まっています。「バスタイムカバー」はタオルなどと違い着用したまま浴槽に入ることができ、着用したまま石鹸で体を洗うことができます。撥水性布地を使用し、タオルで良く拭くと表面はほとんど乾きますので、着用したまま浴衣やシャツを着ることができます。

バスタイムカバー
バスタイムカバー リバーシブル

リンパ浮腫とその予防

乳がんの手術で腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)の郭清をした場合や放射線療法で腋窩リンパ節にも照射を行った場合、後遺症としてリンパ浮腫が起こることがあります。リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが悪くなり、リンパ液がたまることで起こるむくみです。

乳がんの治療後では、流れづらくなったリンパ液が腕にたまりむくみが発生します。リンパ浮腫は、手術後数ヶ月で起こる場合もあれば、数年以上たってから起こる場合もありますので、まずは予防を行い、もし症状がみられたら症状をすすませないためにも医療機関を受診することが大切です。

リンパ浮腫の予防

皮膚の炎症は、リンパ浮腫の発症のきっかけになることがありますので、炎症を予防するために腕にケガをしないように気をつけましょう。

浮腫(むくみ)が発生すると、むくんだ箇所の皮膚が引っ張られて薄くなり、乾燥するため、外部の刺激から体を守るバリア機能の低下し、細菌感染を引き起こしやすくなります。手術した側の腕はむくみやすくなっていますので、皮膚を清潔に保ち、肌のバリア機能を低下させないよう保湿することも大切です。

炎症を起こさないために
・切り傷、深爪、虫刺されなどに注意する
・野外活動をするときは、長袖を着てゴム手袋を着用する
・ムダ毛の処理はカミソリを避け、女性用電気シェーバーなどを使用する
・皮膚を清潔に保つ
・保湿剤などを使用して肌が乾燥しないようにする

リンパの流れを妨げないために
・重い荷物を長時間持たないようにする
・体をしめつける下着やきつい衣類を避ける
・きつい指輪や腕時計をしない
・長時間作業するときは、途中で肩をまわすなどして同じ姿勢を取り続けない
・眠る時は手術した側の腕を上にする。
・仰向けに眠るときは、腕の下に枕や座布団をおくなど、腕を心臓より少し上に持ち上げる
・サウナや長時間の入浴は避ける
・血圧の測定は、手術した側と逆の腕で行うのが望ましい
・太らないよう注意する

予防のためには体を動かすことが有効
リンパ浮腫が起こっているときは、マッサージ(リンパドレナージ)が有効ですが、むくみがでていないときにマッサージをしても予防効果は期待できません。予防のためには、体調や体力に合わせて無理のない範囲で腕や肩を動かすことがおすすめです。

腕や肩を動かすのはよいことですが、やりすぎは逆効果です。テニスやゴルフなど腕を大きく動かすスポーツは負担が大きすぎることがあるので注意してください。

リンパ浮腫の初期症状

リンパ浮腫の初期症状は、下記のような症状になります。症状が軽いうちは、むくみも一晩で解消するかもしれませんが、この段階で医療機関に相談することが症状の進行を抑えるためにも重要です。
・それまで見えていた静脈が見えにくくなる
・皮膚をつまんだときにしわがよりにくくなる
・腕が重い、だるい、疲れる
・腕がむくむ
・腕にしびれを感じる

リンパ浮腫の治療

リンパ浮腫の治療では、弾性着衣や弾性包帯を使ってむくんだ部分を圧迫する圧迫療法や、リンパ液を手で流すマッサージであるリンパドレナージなどが行われます。リンパドレナージは、手のひら全体で皮膚をゆっくり動かすようにし、強く圧迫しないことが重要です。リンパドレナージの施術は、リンパ浮腫のケアの専門家から受けましょう。

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