テーマ『スキンフレイルを知る』
日 時:2019年9月23日(月・祝)12:30~16:30 (受付・開場11:15より)
会 場:石川県地場産業振興センター 本館大ホール(石川県金沢市鞍月2-1)
対象者:医療従事者の方
定 員:500名
参加費:お1人様 1,500円
主 催:越屋メディカルケア株式会社
共 催:公益社団法人 日本オストミー協会
(石川県支部、富山県支部、福井県支部)
講演「IAD-setに基づくアセスメントとスキンケア」
講師:金沢大学 医薬保健研究域保健学系 臨床実践看護学講座
教授 大桑 麻由美 先生
IAD(Incontinence-Associated Dermatitis:アイエーディ)は、排泄物(尿または便、あるいは両方)が、皮膚に接触することにより生じる皮膚炎です。皮膚に排泄物が接触している状況は不快であることは容易に推測ができ、またIADの症状の一つには疼痛があり、苦痛は甚大です。寝たきり患者等の機能的失禁に対するIADの予防と早期解決に取り組むことが必要です。
その第一歩として『IAD-set』、IADの重症度を評価するスケールが開発されました。IAD、排泄ケアにかかわる専門職が、IADについて同じツールを用いて、共通理解をすることができます。今回は、まずIAD-setを紹介し、評価のポイントを概説します。また、このIAD-setに基づくベストプラクティスも公表されました。ベストプラクティスは、現時点における臨床研究、専門家が有する知識・技術・経験を十分に盛り込んだ「実践における最善策」を提示したものです。アルゴリズムに従っていくと、必要なケアが、その根拠とともにわかるように作られています。ベストプラクティス・ケアアルゴリズムについても概説します。
講演「圧迫療法の基礎と臨床:廃用性浮腫から静脈性潰瘍まで」
講師:国家公務員共済組合連合会 横浜南共済病院
院長補佐、心臓血管外科部長、循環器センター長
横浜市立大学医学部 臨床教授 孟 真 先生
浮腫は多くの患者の訴えとなり多くの患者を苦しめており、その原因も様々である。また必ずしも原因を除去して根治できるわけではない。皮膚病変を伴った静脈不全症を示す慢性静脈不全症の概念も静脈性潰瘍のみをさすのではなくより軽度の皮膚病変のない静脈瘤なども含めるようになってきている。本講演では数多くみられる軽度浮腫から難治で再発が多い静脈性潰瘍に最も基本的でかつ有効である治療である圧迫療法について解説する。
圧迫療法の基本は圧迫圧(Pressure)、層(Layer)、構成要素(Component)、伸縮性(Elasticity)と分けて考えるとわかりやすい。頭文字を取ってPLACEとするとわかりやすい。圧迫圧は安静時の圧で表示されるがその効果は安静時圧だけではなく運動時の圧も含めて考慮する必要がある。
圧迫法は、近年様々な方法が導入され、従来の医療用弾性ストッキング、弾性包帯に加え、軽度圧迫圧ストッキング、パイル地弾性ストッキング、圧インジケーター付き弾性包帯、自着性包帯、2層性弾性包帯キット、ベロクロ式圧迫装具が導入され患者背景、重症度にしたがって選択の幅が広がっている。その一方で、圧迫療法による医療関連機器圧迫創傷に対しても注意を払わなければならない。
圧迫療法の原則は①患者さんに受け入れ可能な方法で、②合併症を起こさず選択する。③軽症では簡便な装具で不快感が少ない圧迫圧は低めで伸縮性が高い装具、④重症では圧迫圧が高めで伸縮性が低い装具を選択することになる。口演ではその実例も含めて解説する。
講演「スキンケア最前線-2019」
講師:東京大学 大学院 医学系研究科
健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野教授、博士(医学)
同附属グローバルナーシングリサーチセンター長 真田 弘美 先生
2018年度の診療報酬の改定時、入院時の褥瘡リスクアセスメントにスキン-テアが加わったことにより、高齢者の皮膚の脆弱性に注目が集まるようになってきた。スキンテアは褥瘡とは異なり、良い点は創傷が皮膚に限局するため治癒が早いこと、一方、何度も再発を繰り返すことが問題点といえる。特に在宅などで多く発生するため、家族への指導が重要なカギを握る。最近では、他職種やタクシーの運転手など高齢者に接する機会の多い職種の人からもスキン-テアについての問い合わせがきている。スキン-テアの発生を予防するためには、医療者だけでなく一般の方々も巻き込んで、リスクアセスメントができることが必要とされ、そのツールの開発が望まれている。
いったん創傷が発生した場合は、洗浄が非常に重要となる。最近では壊死組織のない場合にも発生するバイオフィルムの存在が創傷治癒の妨げになっているといわれ、洗浄方法に関する新しい技術が急がれている。また、バイオフィルムに適応できる新しいコンセプトのドレッシング材も輸入されており、日本の高齢者における有効性の検証が待たれている。
ここでは、新しいスキンケアや創傷治癒のコンセプトを紹介するとともに、その具体的な方法について当研究室の知見も交えて概説したい。